ぷよSUN CONFLICT !?

前回のあらすじ:今回の解説者、アイギール。
「前触れも無く、異常にギラつきだした太陽の暴走を止めるため、
ティティス、ジョシュア、キャス、セイニー第一部隊は遺跡に向かう…
しかし、時空の歪みに取り込まれ、目が覚めた時には、
全員バラバラに異世界へと飛ばされていた…
それぞれは、それぞれの決意を胸に見知らぬ世界を歩いて行くのだが…。」
ふっ、旅芸人みたいな表現ね、コレ…。
どうやら、これを書いた人間、ブランクの在り過ぎで
前書きの書き方を忘れたみたいだわ…。
ま、私には関係のないことだけれどね…。

〈第八話〜セイニーvsキキーモラ〜〉

「…なっ…なにコレ…」
セイニーは、自分の眼前に広がる光景を見て、思わず目が点になってしまっていた。
傭兵団に入る前には、いろいろな土地を旅していた彼女だ。
ちょっとやそっとのことじゃ驚かないし、驚かないという自信もある。
だが…これは違う!!今、彼女の目の前に広がる世界は、明らかに何かが狂っていた!!


「なっなんで…こんなに…キレイなのぉ〜っ!?」


セイニーが叫ぶのも無理はない。そう、その世界は、
全てがツルンツルンのピッカピカのキラキラリンだったのだ!!
ちなみに、これはギャグではなく、適確な表現である。
下に道としてひかれている石畳から、
それを伝って左右に対に並べられている狛犬から、
周りに生えている雑草まで!!
全てが異様に光…いや、もう光るではない…
光り輝いていた!!!


「ううっ…これはこれで恐ろしい世界かもね…」


あまりにもある意味で凄すぎる情景に、吐き気すら催して呟いていると、
前方の遥か向こう側から、砂埃と共に何かが猛スピードで近づいてくるのが見えた。



「そこっ!ジャマジャマぁ〜〜〜〜〜っっ!!」


「のわ〜っ!!」



甲高い声と共に迫ってくる「何か」の気迫に、
半ば突き飛ばされそうになりながらもセイニーはなんとか躱す。
すると、その「何か」はキュキュキュキュキューーーーーッと
まるで車がブレーキをかけたかのように勢いを弱め、数メートル先でしっかりと静止した。
しばしの沈黙。
その後、ゆっくりと振り向いた「何か」を見た途端、セイニーは驚いた。


「め…メイドさん…???」


そこには、金髪碧眼、赤いワンピースに白いエプロン、手にはモップ、
おまけに頭には白いフリルの被りものをしている、
どこからどーみてもメイドさんにしか見えない格好の人物が立っていたのだ。
「あ…あの〜」
なんでこんな所にメイドさんが…?とクエスチョンマークを10個くらいつけながらも、
取りあえず話し掛けようと、セイニーが声をかけた時だった。



「きっきゃああああああああっ!!」



突然、そのメイドさんが、大気圏超えて宇宙にも轟きそうな叫び声をあげる。
「えっなっ何!?」
何か敵でも出たのかと周りに注意を走らせるセイニーに目もくれず、
彼女は尚も叫んだ。


「汚れてる…汚れてるわぁ…折角……・せーーーーっかく
塵一つ残さないように念入りにお掃除したっていうのに…
地球に優しく、廃油で作った石鹸で丹精込めて磨いたのに…
どーしてこんなに汚れてるのよぉぉぉぉぉぉっ!!!」


メイドさんは、悲痛な悲鳴をあげながらぐるぐるっと周りを見渡すと、
何のことやら分からずにただ呆然として突っ立っているいるセイニーを
ギンッと睨み付けた。
「あなた…あなたね…折角綺麗にお掃除したところに埃を撒き散らしたのは…
ここを完璧に綺麗にするのに、一体どのくらいの時間を費やしたと思ってるのっ!!」
「え…?えっと、ど…どのくらい?」
「一日と半分よ…それくらい…それくらいかけて綺麗にしたところを汚すなんて…
…あなた、覚悟はいいでしょうね…?」
ギロリンッと見据える彼女の目は恐ろしい程に据わっていて、
後ろからは黒いオーラがユラアアアアアアッと立ち上って、今にも襲い掛かってきそうだった。

…ヤバイ。
これは本当にヤバイ。
今まで生きてきた中で一番の危機かもしれない。
本能で身の危険を感じたセイニーの脳は、次に出てくる言葉を選び出すのに時間を要さなかった。
「分かった…分かったからっ!!綺麗になるまで、掃除手伝うからっ!!」
その途端、メイドさんから放たれていた黒いオーラがピタッと止んだ。



シャーコーシャーコー…


あれから二時間、セイニーはメイドさん…キキーモラというらしい…から言われるがまま、
掃除をしていた。
手には、どこから出したのか分からない、キキーモラから貸してもらったモップ。
「ほんとは…こんなことしてる場合じゃないと思うんだけどな〜。」
ゆるゆるとモップを動かしながら呟いていると、すぐさまキキーモラからのヤジが飛んでくる。
「ほらっそこっ!!口を動かさずに手を動かすっ!!まだまだ先は長いわよっ!!」
そういうキキーモラは、片手でモップを操りつつ、もう一方の手で狛犬を拭くという芸当をこなしていた。
…ここまで来るともう職人芸だよねー…と思いつつ、セイニーは反論する。
「でも…先は長いっていってもさ〜…もうここ、十分にピカピカだと思うけどなー。」
見ると、セイニーがいうのも納得できるほどに、石畳はピカピカに磨かれていて、
ギラギラ照りつく太陽の光を反射するほどだった。
しかし、キキーモラは首を横に振る。
「ダメよ、そんなんじゃダメダメ!!第一、まだ埃は取れてないじゃない!」
「え…?まだ埃があるの!?」
「そうよっ!あなたの三歩前!!それから右斜め横30センチっ!!
それから左横1、2メートル先にそれぞれ微量な埃が落ちてるわっ!」

びしびしびしっ!と指摘する彼女に、セイニーは呆れを通り越して疲れさえ覚えた。
「…キキーモラってさあ…もしかしてどこかにゴミセンサーでも付いてるの?」
「付いてる訳ないでしょ。私はお掃除妖精よ。
とにかくっどーしてもなんにしても汚れやゴミが許せないの!」
目から炎が出るんじゃないかと思われるぐらいの気迫で、彼女は熱く語った。
それくらいゴミが嫌いというのも、ある意味異常である。
セイニーもそう思ったのか、納得しないように言葉を続けた。
「ふ〜んそんなにゴミが嫌いなんだ〜…じゃあ、もしかして、キキーモラって潔癖症?」
その言葉を聞いた途端、キキーモラの眼がギラリッと光った。

「そ・れ・は違うわっ!!私は潔癖症でも完璧主義でも、ましてやおばさんでもないわっ!!
私はね、ただ汚れているのが嫌いなのっ!掃除の血っていうのかしら?
とにかく、汚れているのを見ると、掃除せずにはいられないのよっ!!

掃除こそ我が使命なのよっ!!」


「分かった…分かったから…モップ振り回すのは止めて〜っ」
キキーモラは、興奮してモップを振り回していたらしく、
セイニーはその間避けるのに必死だったようだ。
キキーモラは少々恥ずかしそうにコホンッと咳払いをしてモップの勢いを止めた。
「…とにかく、私が潔癖症じゃないことは分かったわよね?
全く、最近の若い子ってみんな見かけだけで判断するんだから…
この前通って行った若い子もそうだったわ…もう世も末ね…。」
キキーモラがため息を付きつつごちた一つの言葉を、セイニーは聞き逃さなかった。
「この前通って行った若い子…?その子ってどんな子だったの?」
「え…ええーと…そうね。ここらでは見かけない子だったわ。
金髪で、変な黄緑色の服着てて…そうそう、耳が尖がってて長かったわね。」
「それだあっ!!」
パチンッと指をならし、セイニーはここ一番の大声を出した。
「そっか…そっかそっか…!ティティスがここを通って行ったんだね!!
それじゃあジョシュアとキャスもこの先にいるのかもっ!!!
こうしちゃいられないよっ!すぐに後を追わなきゃ!!」
言いながら飛び出して行きつつ、セイニーが走りかけた時である。



むんず。



「うわあ〜っ!」
キキーモラがセイニーの長いポニーテールを掴んだ。
勢いを付けていたセイニーはそのまま石畳へと倒れ込む。
「いったたた…っ、いきなり何するのさ〜っ」
「私はまだ、掃除を終わっていい、なんて一言も言ってないわよ。
…この意味、なんだか分かるわよね?」
にっこり、と極上の笑みを浮かべたキキーモラはある意味最初出会った時の気迫よりも恐ろしく、
結局、セイニーはキキーモラの許可が下りるまで、掃除をするハメになってしまったのであった。
「・・・ああ・・・すぐ行けばティティスに追いつけたかもしれないのに〜・・・
ま、くよくよしても仕方ない。なんとかなるなる!うん!!」
前向きな台詞のセイニーの台詞とは裏腹に、この調子だと、
四人揃える時はまだまだ遠いのは確かなことであった。

★今日の教訓★
塵も積もれば…掃除が大変だわっ!(byキキーモラ)


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