ぷよSUN CONFLICT!?
前回のあらすじ:今回の解説者、アルシル。
「太陽の異常な輝きは、生きとし生けるものの命を脅かす。
そこでエステロミア傭兵団団長は、ティティス、ジョシュア、セイニー、キャス第一部隊を
太陽の異変と関係していると思われる遺跡へと遣わした。
けれど、そこは異世界への入り口で、
ティティスたちは見も知らぬ世界へと飛ばされてしまうのだった…
果たして、彼女たちは無事、元の世界へと辿り着く事ができるのだろうか…」
…これって何の宣伝かしら…?何にしても、大袈裟な言い回しね…。
だいたい、無事に辿り着けないのに、いちいち話を書くことなんてないわ…。
(ごもっとも。)
「あ つ い
〜!!」
歩きつつ、ティティスは何度も何度も…そりゃあもう何百回も叫んだ言葉を口にした。
赤い翼の日焼けクリーム女(ティティス命名)の発言から、目的の場所が分かったのはいいものの、
その場所は激しく遠かった。いや、遠すぎた。
元々森林の奥深くに住んでいて、暑さになれていないティティスは、
この炎天下の中をずっと歩き回るのに、心底疲れ果てていたのである。
「はー・・・どこか丁度いい休む場所なんてないのかしら・・・
こんなんじゃ目的地に辿り着く前にダウンしちゃうわよ・・・」
ティティスが叫ぶのにも疲れたという感じで大きなため息をつくと、
それに同調するかのようにキュルル〜とお腹の虫が小さく鳴いた。
暑いと食欲が無くなると言うが、連続の魔法使用にそれ以上のエネルギーを
費やしてしまったためか、臨界点を突破して体が悲鳴を上げ始めたらしい。
「もーどーしろと・・・」
「はよエネルギー補給せんかい!」という幻聴が聞こえてきそうなお腹の空き具合と
体の疲労に、ティティスはガラになく落ち込み気分になリ始めていると、
前方方向から、何か黄色い空気が流れてくるのが目にとまった。
「な・・・なにこれ・・・この黄色くてもあもあしてるものは・・・・・・?」
一瞬、某魔術師が魔法の実験に失敗して部屋を吹っ飛ばしている姿が脳裏をよぎったが、
その時に出る赤や緑や紫のそれとはまた違った空気の色である。
不思議に思って匂いを嗅いで見ると・・・その匂いにティティスは驚いてしまった。
「こっこれって・・・カレーじゃない!」
そう!正真正銘、夏バテには最適、匂いを嗅げば誰でも(嫌いな人除き)食べたくなってしまうという
あのカレーだったのだ!
「な・・・なんでカレーが・・・?」
と疑問を抱きつつ、匂いのする方へと歩を進めていくと、
やがて一軒の小さな屋台らしき建物が見えてきた。
先に下げてある暖簾には、「パキスタ屋」とでかでかと書かれている。
気が引けるところもあったが、とりあえずこのお腹と背中がくっつくような状態をなんとかしたいので、
ティティスは思い切って入ってみることにした。
「あの・・・こんにちはー・・・」
「いらっしゃり〜の〜」
すぐさま返事をしたのは・・・「大根」のような体に円らな瞳をした店主らしき魔物(?)だった。
「えっと・・・ここはお店なんですか?」
いろいろな驚きで半分混乱しかけている頭でようやく訊ねると、
大根魔物・・・パキスタはこくりと頷いて隣を指差した。
「そうな〜の。ここはカレー屋な〜の。ほら、隣のお客さんも食べてる〜の」
その指の先にいたのは・・・魔物・・・というか・・・的確な表現でいうと、
背中に黄色い卵のようなものを背負っている・・・でかいカエルだった。
視線が自分に来るのを見て取ったのか、カエルはちらりとティティスを見遣る。
すると、突然カレーをめいっぱいかきこみ、独り言のように呟いた。
「美味い・・・美味いんじゃが・・・」
ボツ
ボツボツボツボツボツボツボツボツボツボツ・・・!!
そう言ったかと思うと、カエルの体にはみるみる内に赤いブツブツ・・・
もとい、発疹が大量に、しかも次々と現れ、カエルの緑色の体を覆い尽くしてしまった。
イミフメイの驚きの連続で頭が変になりそうになっていたティティスは
更に加えられたこの出来事にとうとう何処かの糸がプッチンと切れたのか、
気付いた時には大声で叫んでいた。
「・・・なっ・・・なによソレ!?なんなのよソレ!?もーーーー訳分かんないぃぃぃっ!!!」
そのティティスの様子に全く動じることなく、マイペースにカエルは応える。
「わし、カレーアレルギーなんよ。」
「だからってなんでわざわざあたしに見せるみたいに出て来るのよーーーーっ!!」
「そりゃほら嬢ちゃん、わし、商売人じゃけぇ。あれも一種の芸なんよ。じゃから、ホレ。」
カエルは悪びれもなく・・・それこそケロッとして、ティティスにすっと手を差し出した。
「・・・何?」
「お代。嬢ちゃん、わしの芸見たじゃろ?だから観賞賃。」
「はあ!?なっ・・・なんであんなのにお金払わなきゃいけないのよ!じょーだんじゃないわっ!」
「せやけど、見たものは見たんじゃけぇ払うのが道理ってもんじゃろ。」
「何が道理よ!そっちがムリヤリに見せ付けたんじゃない!!」
その場にバチバチバチ・・・ッと火花が散らんとした雰囲気の中、
カエルは何か決意したようにふうとため息をついた。
「嬢ちゃん、どうやら譲る気無いみたいじゃな・・・こうなったら、ぷよぷよ勝負で決着つけようかの!」
「・・・ぷよぷよ勝負?」
また聞きなれない言葉を耳にして、ティティスは再度首をかしげた。
これには、のほほもびっくりしたように目を丸くする。
「知らんのか?四つの同じ色のぷよをどうやって多く消すか競うバトルじゃぞ。」
「知るわけ無いわ。あたしはここの世界の住人じゃないもの」
「・・・そうか・・・どうりで見かけん格好した嬢ちゃんだと思っとったら・・・
そうかそうか・・・異世界からか・・・」
のほほは暫く考え込むようにうんうんと頷いていたが、やがて黄色の卵らしきものを
ごそごそといじくり始めた。
「異世界ならしょうがない、ほな今回はこれ使って戦うとしようかの」
「これ?」
「そう、これ・・・ゲー●ボーイア●バンスを使って、じゃ!」
ババーンという効果音と共に豪語したのほほの手にあったのは・・・
今や小学生男子の必需品とも言われている(?)ゲー●ボーイア●バンス本体二個だった!
しかもスケルトンタイプで中の機械の様子がよく分かるようになっているタイプだ!!
「・・・っていうか・・・いいのかしら・・・現実に本当にあるものを堂々と記述して・・・」
「?何か言ったかの?」
「うっ・・・ううん、こっちの話。・・・で、これどうやって使うの?」
「こう・・・やって通信ケーブルを繋いでじゃな・・・よいしょっと。
ほれ、これで対戦できるようになるんじゃ。」
「へー・・・凄いわね・・・」
「で、本題なんじゃが。」
まじまじと機械を見つめつつ、ティティスが感心していると、
のほほの瞳が鋭くキラリと光った。
「勝負は三回戦。その中で二勝したものが勝ちっちゅー形式でいいかの?」
「え?本当にやるの?あたしルールよく知らないわよ!?」
「それはやっていけば分かってくる。わりかし単純じゃからな。
んで、わしが勝ったら・・・ちゃんとお代は払ってもらうけぇの!」
ギランギランッと瞳をギラつかせて、のほほは宣言した。
どうみても本気である。というか、体全体から殺気すら漂わせている有様だ。
・・・そんなに金に困っているのだろうか?
今にも戦いのゴングが鳴り響こうとする中、ティティスは慌てて反論する。
「ちょ・・・ちょっと待ってよ!貴方はいいかもしれないけど、
あたしはやったこともないのよ!どうみてもあたしの不利じゃない!
「かまやせん。これは運も大きく作用するゲームじゃからな。
運があれば、初心者だってわしに勝つことはできる・・・かもしれんの」
ふふふ、と意味深に笑うのほほの目は既に勝ち誇った色を移していて、
元来、勝気なティティスは持ち前の負けん気がムラムラと湧き上がり、のほほ以上に不敵な笑みで応えた。
「・・・運も実力のうちって訳ね・・・うだうだ言っても止めてくれそうにないし・・・
いいじゃない。受けて立つわ!その代わり、あたしが勝ったらなんでも奢ってもらうわよ!」
―――ゲームスタート!!
凄まじい闘気の中、戦いの火蓋は切って落とされたのだった。
「た・・・たまらんのぉ」
「・・・やった・・・勝ったわ!!」
決着は案外早くついた。結果は2―0という驚異的な結果でティティスの圧勝であった。
「くっ・・・ちっとは名の知れたわしとあろう者が初心者に、しかも完敗するとは・・・!!」
がくりと膝をつき、いかにも悔しそうにうめくのほほに、
上機嫌なティティスはあっけらかんと、言い放つ。
「当然じゃない。貴方積んでばっかりなんだもの。なんていうんだっけ?
まぐれ戦法って奴?それはそれで怖いけど、所詮まぐれはまぐれ。
こまめに邪魔されれば、連鎖できなくて自滅しちゃうに決まってるじゃない。」
「くううううっ・・・・!初心者なのになんという洞察力・・・わしの完敗じゃぁぁぁっ」
地団太を振ってもんどりうつ様な悔しさに喘ぐカエル・・・もとい。のほほとは反対に
ティティスはこれ以上に無い爽やかな顔をして、声を張り上げた。
「それじゃあ約束透り、オゴリってことで!
あのーすみませーん!普通のカレー十皿、店主自慢のカレー十皿、大盛りカレー八皿、
そして、そのお持ち帰りの奴を四個下さーい!」
「あーい、毎度あり〜の〜」
「!?ちょ・・・・ちょっと待たんか!な・・・なんでそっそんなに・・・!?
おまえさんは遠慮というものを知らんのか!?」
あまりの注文の多さに慌てるのほほに、ティティスはにっこりと、ほんとににっこりと笑っていった。
「・・・奢ってくれるって約束だったわよね?」
「・・・・・・・・」
無言の恐怖、という奴だろうか、のほほはそれ以上何も言うことができなかった。
嬉しそうに注文したものを待つティティスの背中で財布を開きつつ、
のほほはまたも呟くのだった。
「ほんとに・・・・たまらんのぉ・・・」
★本日の教訓★
やぶヘビならぬ、やぶガエル。(無駄な争いはやめましょう)
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