ぷよSUN CONFLICT!?
前回のあらすじ:今回の解説者、ミロード。
「…突如、巨大に変貌してしまった太陽を元に戻すべく、
問題の遺跡へと赴いたティティスたち第一部隊。
けれど、そこで何故か異世界へと飛ばされてしまった!
バラバラになった四人は、取りあえず、仲間と合流するため前に進む。
そんな中、前回、ハーピーの金切り声に気絶していたジョシュアは目を覚ました…」
はいっ!!読んだわよっ!ったく、なんでこんなときに、私がこんなものを読まないといけないのよ!
私は今イライラしてるのよ!
魔物ならともかく、たかが井戸を掘るために、「イクスプロージョン」を使わないといけないんだから!!
もう暑い通り越して地獄だわ地獄っ!!
あーもーっ!!上司に訴えてやるわーーーっ!!
「…なんだろう…これは…」
ザザザ…と波が打ち寄せる海岸道を、
四角いカード(のようなもの)を見つめながら、ジョシュアは歩いていた。
ついさっき、天使のような姿を持ち、悪魔のような声を放つ少女から、歌を聞いてくれたお礼にと
半ばムリヤリにもらったものである。
そのカードは、透き通るような水色の紙に「00003」と番号が割り振ってあり、
綺麗な文字で上下に「おともだちカード」と書かれているものだった。
ジョシュアは首を捻る。
「…僕とあの子が友達になったってことで、あの子がくれたのかな…?」
深まる謎を抱えて、ジョシュアが頭を悩ませている所に
「やいっそこのオマエ!!」
と、いきなり叫ぶような怒鳴り声が飛んできた。
また何かに関わりそうになるかもしれないと思いつつ、声のした方向に視線を向けると、
ひときわ大きな岩の上で、赤い魚に人間の手足が生えた、とても変な生物がこちらを鋭い目で睨み付けていた。
「ここらじゃ見かけない顔だな…一体何しに来た?
はっ!?もしや…オレさまの水場を荒らしに来た荒らし屋かっ!?」
ずずいずいっと元々釣り上がっている目を更に釣り上がらせて魚男は詰め寄る。
「えっ?いや、そういう訳じゃ…」
ジョシュアは慌てて反論するが、魚男はそれを遮る。
「言い訳をするトコロが益々怪しい…オマエ!相当な荒らし屋だなっ!!
ひ弱そうな顔でごまかそうとしたってそうはいかねぇぜ…
ふっ…この海の王者、すけとうだら様の水場を荒らそうなんざ、いい度胸してるじゃねぇか!!」
「いや…だから…」
「このすけとうだら様を挑発したことを後悔させてやる!さあ、いくぜっダンシィ〜ン!!」
自分の言いたい事だけ言い放つ(ってか、人の話聞いてない)と、すけとうだらは岩から飛び上がり、勢いよくジョシュア目掛けて降下してきた。
「くっ!」
ジョシュアは身を翻し、かろうじてすけとうだらの攻撃を躱す。とその拍子に、
ヒラッ
手に持っていたあのカードを手放してしまった。
「あ…」
慌てて掴もうとしたがもう遅い。
カードはヒラリと宙を舞うと、丁度落下したすけとうだらの目の前に鎮座した。
「んん?なんだこれは」
言いながら、ひょいっとカードを拾い上げたすけとうだらの表情が、
みるみる内に驚愕の表情に変わる。
「こ…・ここここここれはっ!!!」
「え?君、このカードのことを知ってるのかい?」
上ずった声で、目を白に黒に赤にしているすけとうだらにジョシュアが疑問の声を投げかける。
すると、すけとうだらはキィィッとジョシュアを睨みに睨み付けた。
「知ってるも何も…これはセリリちゃんが自分と友達になった人に配ってる
『おともだちカード』だっっ!!しっしかも番号は00003…お…俺より一桁少ない…
くっ、俺より先にオマエのような奴がセリリちゃんと友達になっていたとは…・!!
いや…あんな天使のようなセリリちゃんがこんな奴と友達になるなんてこたぁありえない!!
そうか!!オマエ、セリリちゃんをたぶらかしやがったなっ!
ちょーーーっと顔がいいからってセリリちゃんの純情なオトメ心を弄びやがって!
おてんとさまが許しても、このオレさまが許さないぜ!!いくぜぇっテイルアタッーーークッ!!」
ちょっと、長すぎやあんた。というような台詞を一気に捲くし立てたすけとうだらは、
俊敏に尾ビレを動かし、殴り掛かってきた。
「だから僕は知らないんですってば!」
そう叫びながらジョシュアがすけとうだらの攻撃を横に避けて躱した時である。
ずががんっっっ!!!
「ななっななななななっ!!!?」
勢いを付け過ぎたすけとうだらの尾ビレが、躱したジョシュアの後ろにあった岩に衝突し、
突き刺さってしまったのである!
「くっ…この卑怯者めぇ!!逃げるとは男の片隅にも置けない奴だ!!
おかげでオレさまの自慢の尾ビレが突き刺さっちまったじゃねぇか!!」
あの場面で逃げない人はいないし、そもそも、自分の不注意さが招いた自業自得の結果だというのに、すけとうだらはヤジを飛ばしまくる。
ジョシュアはふうとため息をついた。
「…仕方ないな…あの、ちょっとじっとしていて下さい。」
呆れたような、諦めたような口調ですけとうだらに一言言うと、スラリと剣を抜き、
そのまますけとうだらの尾ビレがめり込んでいる岩へ、ゆっくりと剣を向ける。
「なにっ…まっまさか!オマエ、オレが動けない事をいいことに、
海の王者であるこのオレさまを倒そうってのかっっっ!!?」
冗談じゃねえぜっ!と、じっとしとけと言われたのにも関わらず、
すけとうだらは尚も暴れまくる。
ジョシュアはそれに動じることなく精神を集中し、そして…・
「…パワースラッシュ…!!」
そう叫んだかと思うと、ジョシュアは自分より倍はある大岩を見事に一閃した。
「ギィャアアアアアアアアアアアッ」
すけとうだらの悲痛な雄叫びと共に、
パカッ
大岩は見事に二つに割かれ、すけとうだらの尾ビレは解放された。
もちろん、無傷である。
「ふう…尾ビレに傷を付けずに岩を割るのって、結構大変だ…。
それより…えっと……大丈夫ですか…?」
ジョシュアは一人ごちると、横にいる、呆けたように真っ白くなっている魚男に声をかける、
「あ…ああ…だ…大丈夫だ…荒海で鍛え上げられたこのオレさまにとっては
塩ほどにもならんことだったぜ……・」
ぼそりといまいち意味が分からん系のことを呟き、すけとうだらは下を向いた。
「…オマエには借りができちまったようだな…だが…!セリリちゃん…
セリリちゃんだけは渡さんからな…!!彼女は海原に可憐にさく珊瑚礁!!
暗い海底に差し込む一筋の光…!!!そう!正しく俺の…」
「………そんなに欲しいんだったら…あげましょうか、その…カード。」
すけとうだらのセリフを遮って、ジョシュアがさらりと言った。
思わずすけとうだらの目が点になる。
「へ?…いっいいのか…?オ…オマエはセリリちゃんが…・」
「これはもともと、人から貰ったカードで、僕にはこのカードがなんなのか分からないし、
“セリリ”という人も知りません。
だから、カードの本当の価値を知っているすけとうだらさんが持っていた方がいい、と思うので…。」
言いながらカードを手渡すと、すけとうだらはしばらく放心したように、ジョシュアとカードを見比べていたが、やがて、
「うっ…オ…オマエって奴はなんっっっていい奴なんだぁ〜!!
疑ったオレが悪かった!許してくれいっ!!
…くぅ〜っっっこんなにハートがビンビンする気分は久しぶりだ…詫びに、
オレ様のとっておきでスペッッシャルなステップを見せてやるぜ!いくぜ、ダンシィ〜ン!!」
と、突然にワケワカラン踊りを始め出した。
「えっ…ちょっちょっと…・」
ジョシュアが声を上げても、例のごとく聞いちゃあいないすけとうだらは、すっかり自分のダンスに酔いしれている。
人のいいジョシュアは振り切ることもできず、結局踊り狂うすけとうだらを見続けることになってしまった。
いつ終わるのか見当もつかないすけとうだらの踊りを見ながら、ジョシュアは心底思った。
“また、こんなオチなのか…”と。
★今日の一言★
すけとうだらの耳(つかあるのか?)にセリリ以外の人の話。