ぷよSUN CONFLICT!?
前回のあらすじ:今回の解説者、ガレス。
「いきなりでっかくなったおてんとさんを元に戻すべく、遺跡へと向かったティティス第一部隊。
だがしかし!なんでか異世界へと飛ばされるハメになっちまった!
皆それぞれ前に進むが、変な奴等が何故か行く手に立ち塞がる。
こんなんで無事に四人は元の世界へと帰り着けるのか?」
…ってか、着けねぇんじゃ『ジオコン』にならんだろ…
ギッコンバッタン
ガガガガ…
『おーいガレスー、なにやってるのさー、早くこっちの井戸も掘ってよー!!』
「おーう、今行くー。」
〈第六話〜キャスVSインキュバス〉
「にゃ…にゃん…」
キャスは歩いていた。
額には大量の汗が滲み出ており、フラフラと足元はおぼつかず、今にも倒れそうな歩みではあったが、
キャスはなんとか歩いていた。
「うう…あの骨じいちゃん、説教が長すぎるにゃん…あれじゃバルドウィンの方がまだマシだにゃん…
うーーーーー足がビリビリするにゃん…。痛いにゃん…痺れるにゃん…。」
文句をたれつつ、一歩、また一歩前に進む。
あの骨男からやっとの思いで開放された(というか逃げてきた)後、キャスは必死の思いで前進していた。
そう、例え大音量で奇声を発している羽根女が飛んでいようが、
何故か岩にめりこんでいる箱のよーな生き物がうごめいていようが、
木陰で必死に何かのクリームを塗ったくっているとかげ女がいたとしようが、
キャスは気にせず、ただひたすらに進んできた。
それもこれも、一重に、
「もっと涼しーとこに行きたいにゃーーーーん!!」
という人(猫?)一倍強いキャスの生理的渇望の賜物であった。
「あーーーもう!!なんでこんなに暑いにゃーん!!
ふつー木がいっぱいあるとこは涼しいものなのにゃん!!!」
現に、キャスが歩いている道の周りには、所狭しと木々が立ち並んでいるが、ちっとも熱気は下がってくれない。
このあまりの暑さに、木々たちも相当参っているようだ。
キャスが尚もぶちぶちと呟きながら歩いていると、
「は〜いハニーvこんな日にどこへ行こうとしているんですか〜?」
何者かが前方から近づいてくる気配と共に、聞くだけで脱力するようなナンパ声が聞こえてきた。
「…おまえ…誰にゃん。」
眼前に姿を現わした男は、尖った耳に、深い海色の髪、
そして、真ん中に赤い宝石が添付してあるマント付きの異型の服を付けていた。
しかも何故だか手に真っ赤なバラを一輪持って。
キャスが、あからさまに胡散臭そうに睨み付けると、男はオーバーアクションで語り出した。
「オー、ソーリー。すみませーん。ミーはインキュバスといいまーす。
美男子の中の美男子というのはー正に、このミーのことを言うのですねー。」
「そんなの知らんにゃん。ってか、そこどくにゃん。」
「アー、ハニー、冷たいですねー。でも、今日は超がつくほど暑いでーす。それでどうですかー?
このミーと一緒に、カフェで冷たいティーでも飲みませんかー?もちろん、ご馳走しまーす。」
“冷たいティー”
この言葉にピクリッとキャスの尻尾は反応する。(ついでに“ご馳走”にも)
あっついあっつい今、この瞬間に、冷たい冷たいお茶でも飲んだらどんなに心地いいだろうか…
キャスは思わず、ナンパな微笑みを浮かべている男に頷きそうになるが…
『キャス、知らない人に付いて行ってはダメですよ。特にやさしそーに近づいて来る人程危険です。
そういう人は、実はバイキ●マンが化けていて、悪さをしようと企んでいるんです。だから近づいたらダメですよ。いいですね?』
という、某J氏の子供用防犯訓練のような言葉が、キャスの脳裏に浮かんできた。
途端にキャスは、ブンブンッと頭を振って、ぴしぃっと男―インキュバスに指を向ける。
「にゃ!にゃん!!そんなこと言ってキャスを騙そうったってそうはいかないにゃん!
正体を現わすにゃん!バ●キンマン!!」
「ホワァイ?なんでミーが幼児番組の敵キャラにならなくてはいけないんですかー?
ミーは正真正銘、世界の美男子、清く正しいインキュバスでーす。」
「嘘ついたってダメにゃん!現におまえの顔から白い液が流れ落ちてるにゃん!!
それは正体を隠す時に顔に塗るものにゃん!!」
キャスの鬼気迫る指摘通り、インキュバスの顔には、
白い液体がだらだらとまるで牛乳を頭から被ったかのように流れていた。
それに気付いたインキュバスは、すぐさま自分の顔を触る。
「OH!シィット!さっきより念入りにメイクしたのにまたでーすか!!
一体いくら時間と予算をかければ…ってそれはプット!置いておくとして・・・、」
ポタポタと流れ続けるメイクを隠すようにバッとマントを翻すと、
インキュバスは世にも恐ろしい双眸でキャスを見据えた。
「なっなんだにゃん…」
「ハニー…ミーの素顔を見てしまったんですね…かわいそうですが、ハニーにはここで死んでもらいまーす!『テンプレーション!!』」
一瞬怯んだキャスの様子を見逃さず、インキュバスの攻撃がキャスに向かって発動する。
逃げる隙も無かったキャスに、攻撃はものの見事に炸裂した…のだが!
「…にゃん?」
しかし、そこには何も起こらず、ただ、普段となんら変わらぬキャスのキョトンとした姿があっただけであった。
これには、技を受けたキャスもだが、出した方のインキュバスはもっと驚いたようだった。
双方、目を見開き、唖然とした様子でしばらくの沈黙が流れる。
「ホ…ホワァイ…何故デース……ミーの『テンプレーション』…『魅了』はパーフェクト…
何の種族であろうとも…レディーでかからないモノはいないハズ…なのに…何故…」
沈黙を破ったのはインキュバスだった。呆けたように自分とキャスを見比べながら弱弱しく呟く彼の言葉を、キャスは聞き逃さなかった。
「テ…『テンプレーション』にゃん!?にゃ…それだったら効くはずないにゃん!!
キャスは正真正銘、仁義溢れる人情厚い、漢(おとこ)の中の漢だにゃん!!!男の『テンプレーション』が効く訳ないにゃん!!!!」
ズガーーーーーン!!
インキュバスの脳内に衝撃が走った。
「サッチ…そ…そんな……今の今までボーイをレディーと間違えたことなんてなかったのに…
ミ…ミーは淫魔として失格でーす…」
ガクリと項垂れてインキュバスは地に伏した。その一瞬の拍子に、今まで頑なに閉じていたマントが、パラリ、とめくれた。
「………!!!!!?????」
キャスは、見てしまった。
インキュバスの本当の容貌を。
どんな容貌だったか、というのは定かでないので明記できないが、
ただ、それを見たキャスは、反論するのも忘れ、マッハ2のスピードでその場を逃げ去った。
ということは事実である。
★今日の一言★
知らぬがバラ。(どちらにとっても。)