ぷよSUN CONFLICT!?
前回のあらすじ:今回の解説者、ゼフィール
…「何故太陽は異常と思われるほどにまで成長してしまったのか?このままではエステロミア王国、
いや、エバンアタウ大陸全体が危ない。大陸の運命を背負い、原因を探るべく、
ティティス第一部隊は遺跡へと向かう。しかしそこで異界へと飛ばされてしまい…
キャスはお茶好きな骨男、ジョシュアは天女の姿に地獄の声を持った少女、
セイニーは体が人間で顔は箱の変な生物にそれぞれ出会った。
さて、一方リーダーであるティティスは?」
…読んだぞ。全く…なにも、この忙しい時にわざわざこんなのを音読させるとは・・・
とにかく、義務は果たした。私は忙しいからもうゆくぞ。
(ちょっとご立腹気味のゼフィール氏であった。)
〈第伍話〜ティティスVSドラコ〉
「ちょっと!そこのあんたっ!!」
いきなり呼び止められたのは、潅木がちらほらと見える野道でのこと。
あの名も知らぬ遺跡から異界へと転送されてきたティティスが、とりあえず先へ進もうとした矢先であった。
呼び止められたといっても、前からでもなく、後ろから、ましてや横からでもない。
『空』から声が降ってきたのである。
「!?」
反射的に身構えると、びゅおっという風圧と、それに伴った砂埃が起こり、思わず目を眇(すが)めている間に、声の主と思われる少女がこちらに向かって対峙していた。
鮮やかな朱色の翼に黄色い瞳、若草色の髪からは、にょっきりと白い角が顔を出し、髪と同色のしっぽも生えている。見るからに『龍』を連想させるような出で立ちだが、何故だか格好は赤いビキニ姿であった。
「ふぅ〜ん…あんた、ここらへんじゃ見かけない顔だね。」
怪訝そうな顔をしながら、少女はじろじろと嘗め回すようにティティスを見る。
「あっ当たり前じゃない!あたしはここの世界の住人じゃないんだからっ!」
初対面の相手に対する興味の目つきでは無い、何かを推し量っているようなねっとりと絡み付く視線に気圧されながらもティティスが喚くと、少女は少し驚いたように目を見開いた。
「へー、ここの世界じゃないってことは…異世界から来たってことかぁ…
ねぇ、じゃあさ、じゃあさ、あんたの世界に『美少女コンテスト』ってある?」
「はぁ?『美少女コンテスト』ぉ〜?」
少女のあまりにも意外な(というか変な?)発言に素っ頓狂な声をあげると、少女は待ってましたとばかりに大きな目を更に大きくし、星まで浮かべて語り出した。
「そう、美少女コンテスト!!。村中町中、はたまた国中世界中から美少女たちの中の美少女を決めるコンテストよっ!ひしめく美少女たちの中に現れるひときわ輝く一条の星!観客は息を呑み参加者は目を見張り、圧倒的なまでの差に呆然と立ち竦む…われんばかりの拍手の中、輝くトロフィーを持って優雅に微笑むのは、このあ・た・し。ドラコケンタウロスなのよっ!」
びしぃっと指を突き立て、夢見ごこちに宣言する少女―ドラコに向かってティティスは負けじと反駁する。
「知らないわよそんなものっ!あたしたちの世界じゃつい最近までそんなことするヒマなんてなかったんだから!だいたい、最後の方はあんたの願望じゃないのっ!そういうこと言ってる人ほど、優勝なんてできないのよね〜。」
「ムカッ、人が気にし…じゃなくて、でたらめなこといってくれるじゃない!あんたには言われたくないよっ!…確かにスレンダーさと頭身には負けるけど、
胸はおんなじくらいだし、あんたの真っ白白の肌に比べてあたしのは健康的な小麦色!それに、このキュートな角と尻尾をプラスすれば、断然あたしの勝ちね!
あんたなんか予選落ちよ、よ・せ・ん・お・ち。」
勝ち誇った笑みでこちらを見遣るドラコに、ティティスの短い堪忍袋の緒はいまにもはちきれそうになるが…
(……………っ!落ち着いて…落ち着くのよあたし!今はこんなことしてる暇じゃないわ!
とりあえず前に進んで、どこにいるともしれないジョシュアたちを探すのが先決!今、ここで暴れたら、また変な奴が現れて大変なことになる可能性大よ!だから落ち着いて…我慢我慢…)
と、珍しく理性を働かせて、グッ、とこらえた。そして涼しい顔で言い放つ。
「ふ…まあ言わせといてあげるわ…それより、そこどいてくれない?あたしは今あんたと争っている時間はあいにく残ってないの。」
ティティスは、前方にふさがるように立っているドラコを押しのけるように進もうとする、が…
「ちょっと待ちなさいよっ」
ドラコは両手で尚も進もうとするティティスの手を掴むと、疑わしそうに口を開く。
「あんた…まさかサタン様の塔に行く気っ!?」
「はあ?」
二度目の予想外の言葉に、驚くよりも呆れ色を見せるティティスだが、ドラコは思い込んだら突進していくタイプらしく、益々声を荒げた。
「しらばっくれても無駄だよ。そうか、やっぱりあんた、サタン様に会いに行くつもりだねっ!?不覚だった…ルルーやアルルの他にもライバルがいるってことは知ってたけどこんな奴なんて…異世界から来たとかいってあたしをだまそうったってそうはいかないよっ!くらえっ!『ファイヤーブレス』!!」
呪文のような言葉を言い放つと、ドラコは口から燃え盛る火炎の炎を吐き出した。
瞬時に飛びのいてかわしたが、ティティスが立っていた場所に生えていた草は、ものの見事に焼き尽くされて、あとには黒焦げの大地がしゅうしゅうと煙をあげていた。
「ちょっ…!なにするのよ!!あたしは『サタン』なんて奴知らないって言ってるでしょ!誰よそいつっ!!」
「トボけるなっ!『サタン様』はこの国を統べる『魔王様』だってこと知ってるくせに。シラジラしいわよあんた!!サタン様にアタックしたいんならこのあたしを倒す事ね!そらもういっちょ『ファイヤーブレス』っ!!」
鬼気迫るドラコの攻撃をかわしながら、ティティスは切実に思った。
“なんだかトンでもない勘違いをされている!!”
しかし、この状態では、大声で事実を叫んでも、ドラコは絶対に聞き入れないし、増してや思い直すなんてことはしないだろう。
どうしようかと考えを回らせてみると、さっきのドラコが言った、『魔王』という言葉が、耳の奥から甦ってきた。
待てよ。
とティティスは再度思う。『魔王』…この国を治める…いや、この世界を治める王…があの塔にいるのなら、行かない手はない。
『魔王』ならば、自分たちの世界で異常なまでに照り輝いていた太陽と、今、それ以上の熱気と大きさで、頭上に留まっている太陽との関連も分かるかもしれない。
否、ここの世界にわざわざ飛ばされてきたことを考究すれば、もしかしたら原因を作っているのがその『魔王』なのかも…。
ドラコのたゆまぬ攻撃に身を転じながら、チラリと前面を見ると、塔の先端らしきものが遥か彼方にあり、案の定、そこから一筋の膨大な光が太陽に向かって注がれているのが見えた。
(やっぱり…あそこね!)
目標を捕捉し、確信の笑みを漏らす。すると、ドラコは何かに感づいたように声を張り上げた。
「なにニヤニヤしてんのよっ!言っとくけどね、サタン様はあんたみたいな
“全く全然大したことない子”(←強調)なんかにお会いになんてならないよ!!」
ぶち。
途端にティティスの頭から何か鈍い音が聞こえた…気がした。
「あーんーたーねー…言わせておけば、言いたいことばっかり言ってくれちゃって!!
もー、あったま来た!こっちだって逃げてばっかじゃないのよっ!『エアブレイド』!!」
文字通り、ティテイスは“切れた”らしい。両手に精神を集中すると、カマイタチの風を生み出し、ドラコに向かって投げ打つ。
「うわっ…ちょっと!危ないじゃない!!危うくあたしの絹のよーな肌に傷がつくトコだったよ!!」
「今更何いってんのよ!元はといえば、あんたが先に仕掛けてきたんでしょーがっ!!」
喧々囂々、口やかましく怒鳴り立てながらも、相手への攻撃を緩めない二人はある意味すごい。
これが女の闘いというものだろうか?だんだんとエスカレートする戦いに、もはや誰も立ち入る隙間はなかった。
「ほーんと、あんたってばダっサイね!イマドキ白い肌なんて流行遅れもいい所なんだから!夏はこーんがり焼いた肌にビキニの水着ってのがいい女の条件なんだよ!」
ドラコが吼えればティティスは唸る。
「ダサイってなによ!だいたい、あんた知らないの?日焼けしすぎると、紫外線から守るために肌の中にあるメラニン色素がどんどん出て、結果的にシミの原因になるし、肌にもすっごく悪いのよ!これくらい、キャスでも知ってるわ!」
なんでそこに某ケットシーの名前が出てくるのかという疑問はさておき、ドラコはそれを聞くと急に血相を変え、食いつくように問いただしてきた。
「なっ…そっそれホントっ!?」
「当然でしょ。こんな時に嘘いって何になるのよ。」
急に攻撃を止めたドラコに次いで攻撃の手を休めて、ティティスが不機嫌そうに応える。
しかしティティスの声は届いているのかいないのか、ドラコは自分の手や足を一見すると、いましも飛び上がらんばかりにうめいた。
「じょ…じょーだんじゃないわっ!あ…あたし全身黒焦げ状態じゃない!こうしちゃいられない!早く日焼け止めクリーム塗らないと〜っ!!!
あ、あんたとの勝負はまだ着いてないけど、取りあえずここは引き分けにしといてあげるわっ!!じゃねっ!」
一通り自分一人で騒ぎ終えると、日焼け少女は疾風(はやて)のように走り去って行ってしまった。
「…なんだったのかしら?」
しばし呆然と、嵐のような少女の後ろ姿を見送っていたティティスはポツリと呟いた。
でも、これで分かった。どこに行くべきか、そして、なにをするべきなのかということが。
遠く彼方にそびえ立つ城をしっかりと見据え、ティティスは新たな一歩を踏み出すのであった。
★今日の教訓★
日焼けからでるシミ。(←何)