ぷよSUN CONFLICT!?
※今回、ちょっぷんが出てきますが、作者があまり知らないため、
言葉遣い等が間違っているかもしれませんが、その点は見逃してくださると嬉しいです(汗)
〈第四話〜セイニーVSちょっぷん〉
「わー海だ〜!!」
丘を駆け上ると、心地良い潮風と共に、青い絨毯のような海が一面に広がっていた。
「気持ちいい〜!!異界にも『海』ってあるんだね〜」
軽く伸びをしながら、歓声を上げる。
結んである茶色い、艶やかな髪が、風に靡いた。
彼女――セイニーは、気が付いてみると、何処とも知らぬ所に投げ出されていた。
ここが『異界』だという事は、前の出来事もあり、すぐに判断が着いたが、
どうやったら元の世界に戻れるのかはまるで見当がつかなかった。
なので、これからどうしようかと、少し迷ったりもしたが…
「まあ、くよくよしててもしょーがないしね〜、前に進めばみんなに会えるかも!
そうと決めたら、いざしゅっぱ〜つ!!」
と持ち前の前向きさで、彼女はここまで来たのである。
「こんなにゆっくりできるのって、久しぶりだな〜。
ここんとこ毎日井戸掘りとかばっかりだったから。たまにはこ―いうのもいいよね。」
こういうのを戦士の休日とでもいうのだろうか。
異界に飛ばされたのも悪くなかったな、と思いつつ、セイニーは海をのんびり観賞していた。
ザザーン…サザーン…ザザーン…
波の旋律が、調子良くリズムを織り成して、とても心地よく、
思わず、目をつぶって聞き惚れてしまう。
ザザーン…サザーン…ザザザザーン…
ギコッギコッギコッ
「?ギコッギコッギコッ」
静穏な海の風景に似つかわしくない奇妙な音に、思わず振り返ってみると…
ギコッギコッギコココッ
四角い眼鏡をかけた変な箱みたいな顔に、普通の男の体が付いている、
魔物なんだか人間なんだか分からない変な生物が、それはそれはでっかい石の上で、
一心不乱に足元に敷いてある板を動かしていた。しかも、何故だか水着姿で。
その風采は…不気味としか言いようがなかった…。
「なにしてるんですか〜?」
普通はなるべくこういう輩には関わらないようにするところだが、セイニーは違う。
近づいていくや否や、その箱男にフレンドリィに明るく声をかけた。
「……………」
聞こえていないのか、箱男は応えず、尚も先の尖った赤い板と体をくねくねと動かし続けている。
「あの〜…聞いてます?踊ってるんですか?それとも、体操?…あ!そうか!もしかしてダイエッ」
「じゃかーしいっ!!見て分からんのかっ!!!サーフィンじゃ『サーフィン』!!」
尚も話し掛け続けるセイニーに業を煮やしてか、箱男は言葉を遮って叫んだ。
「サーフィン?」
セイニーの頭にハテナマークが五個浮かぶ。
サーフィン…なんだろう?長く旅していたこともあるけど、聞いた事のない名前だ。
スポーツか何かだろうか?でも、石の上でするスポーツってあったっけ…??
セイニーがぐるぐると考えを巡らせていると、箱男は不審そうにこちらを見つめた。
「なんじゃ、おまえ、サーフィンを知らんのか?」
「うん。だって、わたしここの世界の住人じゃないからね〜…
で、それって石の上でするスポーツか何かなの?」
「なんじゃとっっっ!!!???」
思った通りのことを口にすると、箱男は突然顔を真っ赤にして怒りだしてしまった!
しかも、どこから出るのか、箱のような顔から湯気まで出している。
うわ〜なんかヤバイこといったかな〜?とセイニーがあたふたしていると、箱男はおもむろに精神を集中するかのように動きを止め、そして…
ピカーンッ
と箱男の眼鏡が光った。
その瞬間ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……と下から地響きが響いて来て、
それと同時に海水が物凄い勢いで上昇してきた。
「なっなにコレっ!???」
セイニーは慌てて箱男がいる石の上に飛びすさる。
「よ〜く見とれっ!!これがサーフィンというもんじゃあああっ!!」
箱男はそういうと、そのまま上昇してきた海水に板ごと突っ込んで行ってしまった!
「あっ危なっっ…!!」
このままでは溺れてしまう!!そう思って咄嗟に箱男が飛んでいった方向に目を向けると…
箱男は見事に水面に着地し、巧みに赤い板を操って波に乗っていた。
「ひゃっほーっほぅほぅーーーっ!!」
ザザザザザッと水飛沫を上げて進んでいく箱男の様子を、セイニーは呆気に取られて見ていた。
今まで見た事もない、まるで一種の芸のようなスポーツ…
「これが…『サーフィン』…?…すごい…すごいよ箱男さ〜んっ!!」
セイニーは興奮して、感嘆の声をあげた。それを受けて、得意そうに箱男は波に乗り続ける。
…が!しかし、この後、箱男に最大の危機が訪れようとしていた!!
その危機とは、
ドズザザザザザザ…
津波である。
全長8メートル程の津波が、徐々に箱男の後ろから近づいてきていたのである!!
それにいち早く気付いたセイニーは、必死に箱男に叫んだ。
「おーーーーいっ!!箱男さーーーーんっ!!後ろっ!後ろから津波がきてるよーーーっ!!」
「んーー?なんじゃあ〜?」
「だから津波っ!!津波だってば〜!!!」
「おー、そうかそうか、オレはそんなにかっこいいか〜!!」
まるで見当違いのことをぬかす箱男は、自分が面している危機に全く気付いていない。
その間にも、津波はいよいよ勢いをまして箱男に迫り来る。
その差、あと1メートル!!
「こうなったら…」
セイニーはいちかばちか、という思いで意識を集中し、そして…
「スピンナックル!!」
と技を繰り出した
セイニーの腕から、凄まじい勢いで突風が飛び出す。
その技は回旋し、寸分の違いなく…
バッコーーーーーーーーンッ
箱男に当たった。
「なんじゃあ〜〜〜〜〜〜〜!!!」
直に技が当たった箱男――ちょっぷんは、はずみでそのまま空の彼方へ消え去っていってしまった。
「あっちゃ〜…ちょっとやり過ぎちゃったかな…」
自分の腕を見ながら、セイニーは呟いた。
「呑み込まれる前に、津波の範囲から脱出させようと思ったんだけど…
技が強すぎたみたいだね…箱男さん、だいじょーぶかな…」
と言って、セイニーは箱男が飛んでいった空に目を上げた。
その空は、一片の曇りも無く、相変わらず青く澄み広がっていた。
★今日の教訓★
パンチは口ほどに物をいう。
(まあ、津波にさらわれるよりは良かったかも…。)