ぷよSUN CONFLICT!?
前回のあらすじ:今回の解説者、リビウス。
なになに…「太陽が増大した原因を探るべくして、遺跡へと向かったティティス率いる第一部隊は、
突如として異界へと呑み込まれてしまう。
部隊のメンバー、キャスは、ひょんなことからお茶好きの「スケルトンT」と出会い、
何故か説教をされるハメに陥ってしまうのだが…。」
と…ふむ…これは書類ではないようだな。ここに置いておいても嵩張るだけだ。
分別して資源ゴミに出しておかなければ…。〈バサバサバサッッ……。〉
〈第参話〜ジョシュアvsハーピィ〉
「…ここは…異界…なんだろうか…」
見慣れない風景を見渡しながら、ジョシュアは一人呟いた。
刺すような暑さに、落ちていた意識が再び呼び寄せられたのは、遂さっきのこと。
暑さと熱気にふらふらとしながらも、眠っていた脳を奮い起こし、意識が飛ぶ前の事を思い出してみる。
自分の記憶をなぞっていくと、どうもここは異界らしいということが結論として出された。
あまり考えたくはなかったが、今の事況からいってそうとしか考えられないな…と思い、
ジョシュアは自然とため息をつく。
「そういえば、ティティス達は…?」
ふと気付き、再度辺りを見回してみるが、それらしき影はどこにもない。
「異界に転送された時に逸れた可能性が高いな…
ここにずっと居てもしょうがないし、とにかく、前に進もう。」
その内会えるかもしれないし。と付け加えてジョシュアは歩き出した。
歩き出したのは良かった…だが、それと同時に暑さもぐんぐんと増してくる。
特に鎧を着ているのも災いして、数倍もの熱気が体を蝕み、
読んで字のごとく、汗が大量に吹き出す。
しかし、良く知らぬ異界の地で何が起こるのか分からないので、外す訳にもいかない。
(しかし…どうしてこんなに太陽が大きいんだろうか…?)
大きいにもそれなりの限度があるだろうに、
そんな事はお構いなしというように、太陽は我が物顔でギラギラと輝いている。
…実際、顔もあるし。
何か原因があるのだろうかと、思考を巡らしていると…
しくしくしくしくしくしく〜♪
「?」
泣き声とも歌声ともつかない声音が微かに聞こえて来た。
「なんだろう…?」
最初は暑さのせいで幻聴が聞こえたのだろうかとも思ったが、
声はジョシュアが歩を進めるたびに強くなる。
さすがにおかしいと思って歩調を早めて行くと、
徐々に声を発している人物の姿が浮き彫りになって来た。
白いワンピース風の服に、桃色のウェーブがかった髪。
そして何より、背中から生えている金色の翼が目を引く少女…
ジョシュアにしてみれば、翼の生えた人間なんて種族は見た事もなかったので驚いた。
けれど、あまりにもその子が悲しそうにしているので、たまらず声をかける。
「…君は…どうして、こんな所で泣いているの?」
「わたしの〜♪歌を〜♪誰も聞いてくれないんですぅ〜♪」
すぐさま、歌を歌うように彼女は応えた。
心なしか耳が痛いような気がするが、それは気のせいにしておき、ジョシュアは再び訊ねる。
「え…歌を?」
「はい〜♪みんな〜♪私が歌を歌おうとすると〜♪いなくなってしまうんです〜♪
それでも〜♪歌は歌えるんですが〜♪やっぱり〜♪誰かに聞いてもらいたいんです〜♪
あの〜♪よければそこの方〜♪私の歌を〜♪聞いて下さいませんか〜♪」
歌うように続ける彼女はやはりどこか哀しげで…元来気が優しい(すぎるともいう)ジョシュアは
難なく彼女の願いを承諾してしまった!
「え…あ、うん。いいよ。歌を聞くくらいなら。」
「わ〜♪ありがとうございます〜♪」
その言葉を聞くなり、彼女は嬉しそうに顔を輝かし、背中に生えている二枚の翼を羽ばたかせ、
空たかーく上っていき…
「はらほろひれはれ〜♪」
と、大音量で勢い良く歌い出した。
「う…うわっ…」
耳の鼓膜をつん抜けて脳の奥底まで響きまくる歌…
いや、もう超音波とでもいっていいような気もするが…に思わず耳を塞ぐが、
全く効果はない。それどころか益々轟き渡る。
「こ…これは…〔リビングドール〕の『ヒステリーボイス』よりもきつい…かも…」
たまらず、歌っている彼女を見上げ、制止しようと声を出そうとするが、
彼女はとても気持ちよさそうに、心地よさそうに、歌を歌っている。そんな様子を見せられては、
ジョシュアは黙って聞く…いや、耐えるしかなかった。
まあ、どうせ言った所でこの歌声の前ではハチの羽音ほどにもならないと思うが。
そんなこんなで何時間たっただろうか?
彼女――ハーピィーーは、やっと満足したのか、空から地上に向かって降下し、
そして、もはや気力だけで立っているジョシュアの前に満面の笑みで降り立った。
「私の〜♪歌を〜♪聞いて下さってありがとうございます〜♪お陰で〜♪
自信が持てましたわ〜♪お礼に〜♪これを差し上げます〜♪」
と言うと、四角いカードのようなものをジョシュアに差し出した。
ジョシュアが(気力で)受けとったのを認識すると、
また凄まじい音量で歌いながら、その場を去っていった。
「……………っ」
バタッ
受け取ったカードがなんなのかを確認する前にジョシュアの意識は暗転した。
彼は知らないが、まだまだ道程は不安なほど果てしなく遠い。
しかし、その前にしばし、一時の気休めともいえる休息も必要ではあるのかもしれない。
★今回の教訓★
彼を知り、己を知れば、百戦危うからず。
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