「興味ない……っていうのも確かにあるけど……
 でも、僕には関係ないっていうのが一番かな。これからも、ずっと」

正直、こんな言葉が返されるとは思っていなかった。
たかが……というのは適切な言葉ではないかもしれないが、
普通ならば、こんな話で陰を落とすような言葉は返ってこない。
何か、彼の中であったのだろうか。
「そう」とそれ以上踏み込まず、何もなかったかのようにすることはできる。
実際今までそうしてきた。だけど、今回は様子が違うのだ。
踏み込むべきか、否か。
しばらく逡巡して、口を開いた。

「どうして?」

今回は踏み込もう、多分心の奥底でそうしてほしいと思っているであろう、彼のために。



「どうして?」と、疑問系で言葉を投げかけると、
彼はハッと弾かれたように顔をあげた。
……その表情には、『しまった』と書いてある。
きっと、自分も意図せず出してしまった言葉なのだろう。
だけど。
多分この問題は今語るべきことなのだろうと、直感が告げていた。
「関係ないとは思わないわよ?
 だって貴方もいずれはそうすることになるかもしれないし」
あまり重くなりすぎるといけないので、わざと軽めの調子で続ける。
「それに、貴方の歳じゃもう他人事って訳じゃないわ。
 十分、適齢期の範囲内に入ってる。
 真面目にそれを考えてもいい頃ってことよ」
軽めな言葉で流し、最後は真面目に言葉を締める。
真剣な相手の言葉を望んでいることを相手に悟らせるために。
その意図が伝わったのだろう。彼は黙りこんでしまった。

長い、長い沈黙がつづく。
きっと彼も葛藤している。
この言葉を、自分に言ってもいいかどうか。
だけど、ここまで煽ったんだもの、本当の言葉を聞かせてくれるでしょう?
ミロードは黙ったままのジョシュアの向かいから離れることなく、対峙しつづけた。

昼の喧騒が、落ち着きはじめ、ミロードが三度目に注文したコーヒーが届いた頃、
ジョシュアが静かに、口を開いた。
「分からないんだ」
「……分からないって?」

小さな。

小さな勇気を振り絞った結果であるだろう彼の答えに、
ミロードはゆっくりと優しく問い返した。
その言葉に、意を決したのだろう。彼は俯いていた顔をあげ、
ミロードをじっと見た。

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