「レイン!レイン!大丈夫!?」
遠くから、声が聞こえる。
懐かしくて、ほっとする声が。
遠い声はどんどん近くなってきて……
ぱちり、と目を開くと、双子の片割れの瞳が心配そうに覗き込んでいる姿が見えた。
「ファイン……?」
「よかったー起きてくれて!
なんだかすっごくうなされてたから、心配したんだよー!
どうしたの?悪い夢でもみたの?」
安堵の息を漏らして、ファインがいつものおひさまのような笑顔で笑った。
周りを見てみると、隣にはファインのベッドが、
そして、窓からは自国が作り出すお日様の光が窓から差し込んでいるのが見えて、
ああ、あれは夢だったのか、とやっと納得することができた。
「……ほんと、どうしたの?」
しばらく、ぼうっとしていた自分に対して、屈託の無い赤い瞳が見つめてくる。
心配を全身で表している片割れに、いらぬ心配をかけてはいけないと、
レインは優しくファインを抱き寄せていった。
「ごめんね。ファイン。うんほんと、悪い夢を見ただけよ。心配いらないわ」
「ほんとに……?」
「ええ。大丈夫。大丈夫よ」
半分は自分に言い聞かせるように、レインは呟く。
正直、夢の威力は凄まじかった。
あれは、夢ではない、本当にあったことだといわれれば、
夢だと分かった今でもすぐに納得できるように現実的なもので。
彼の息遣い、自分の思いは今でもリアルに胸に残っている。
けれど、このことは自分の問題なことは明白だ。
片割れに、心配させるようなことではないということも同時に分かっていた。
「さ、まだキャメロットも来てないみたいだし、
早く支度しちゃって驚かせちゃいましょ!
きっと目をむいて倒れるわよ!」
そう声を張り上げると、ファインはまだ心配そうな表情をしつつも、精一杯笑顔になってくれた。
「そうだね!今日はブライトとシェイドも来るし!
早めに支度しちゃわないとね!」
そう言って、パタパタとクローゼットに走っていくファインの後姿を見て、
「……そうね」
と返事を返しつつ
ファインの、ブライト、という言葉に一瞬固まった自分を見られなくてよかった、胸をなでおろした。
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