サンタクロースが街に来た
屋根のうえを滑る二つの影
「なあファイン、どうして俺達がプレゼントを配らなきゃいけないんだよ」
シェイドのはく息が白く立ちのぼってゆく。
「運動神経がいいでしょうからあなた達にお願いしますってプリンセス・グレイスがいったんだもん」
「でも」
つと、シェイドが立ちあがり、手を広げた。
「こんなにひろい町じゅうをたった二人で配れだなんて」
それをみてファインは困ったように曖昧な微笑を浮かべる。
「頑張ろうよ」
シェイドはサンタの帽子の下から苦い表情をみせた。
そんな彼のそばにいくためにファインはレンガで出来た屋根をのうえをタカタカと走る。
胸元についている小さなベルが揺れるたびに優しい音をたてた。
「シェーイド」
「……」
シェイドが寒さで赤らんだ鼻のまま黙って空をみあげた。
満天の星空。空気が透明に凍てついているから、天の川まではっきりとみえる。
じっとみていると、トライアングルを弾いたときにする音がどこからともなく聞こえてくるようだった。
「…このプレゼントはね」
しばらく星をみつめたあとでファインが口をひらく。
「レインとブライトが全部、包んでリボンをかけたの」
シェイドがそれを聞いて、瞳を閉じると彼の頭上に流星群が降り注いだ。ファインはそれに目をこらす。シェイドがゆっくり瞳を開いた。
「…わかった、配るよ」
「うん…!」
今度の家はあの黄色い壁の家、二人はそういうと屋根を蹴った。風にうまくのった二人は、目指す屋根に舞降りる。