「……!!!」



思わず、何かを叫んだ後、飛び起きた……らしい。
「……?」
落ち着いた頭で、再度周りを見てみる。
まず自分のすぐ側にある。腿までかぶせた毛布。
次に周りにある乱れたシーツ。
そして、いつもと変わらない自分の部屋。
「……あれ?」
ついさっきまで、道ばたで泣いていたような気がする、と思って
目に手をあてると、なるほど、泣いてはいたようで、頬を涙が伝っていたあとはあるが、
結局それだけが一緒で、あとは違う。
いつもの、風景だ。

「これは……もしかして……?」
湧き上がってきた現状認知にほっと安堵の息を漏らすけれど、
いやいやしかし、これがもし本当じゃなかったら逆に嫌だ。
何かのワナかもしれないし!と思い立ったティティスは、本能の赴くままに部屋から出た。
着替えすらもすませないで飛び出したのは、寝ぼけ頭のなせる業だと、あとで本人は後悔する。

「シャロット!いる?」
ノックもそこそこにバンッと部屋を開けると、ちょうど身支度が終わったらしいシャロットが
突然の来訪に目を丸くした。
「え、ええ、いますけど……って、ティティスさん、どうしたんですか?そんなカッコで……」
「ね、シャロットはシャロットでシャロットだよね!?
 シャルロットとかいう名前じゃないよね!?」
「え?あ。はい。間違えてそう呼ばれることはありますけど、
 本当の呼び名は『シャロット』ですよ?」
手を握ってなんだか真剣に迫ってくるティティスの気迫に、
困惑しながらも丁寧に答えたシャロットの言葉に、
ティティスは心底満足したように息をついた。
「よかったー!ほんとよかった!ごめんね急に。じゃあまたあとでね!
 リビウス早く戻ってくるといーね!」
そういうと、彼女は文字通り、疾風のように去っていった。
「……一体なんなんでしょう……」
あとに残されたシャロットはそのまま、しばらく固まっていたという。

「ジョッシュッア!いる!?」
ノックもせずにバーンと開け放ったドアの向こうで、
何かを飲んでいたらしいジョシュアは盛大に中身を吹いた。
「ちょ……ティティス、どうし……」
いきなりの朝っぱらからの来襲に困惑しきりといった調子のジョシュアに
ティティスはずずいと迫って、しんみょーにいった。
「……ジョシュアはジョシュアで、ジョシュア以外の何者でもないよね?」
「……う、うん、僕は僕で僕以外の何者でもないけど?」
勢いに負けてそのまま反芻するように答えると、
ティティスはほーーっと安堵したようにため息をついて……
そして普段なら絶対しない行動……ジョシュアにそのまま抱きついた。
「え、ちょ、ティティス!???」
「よかったーーーー!ああ、もうほんと、あれ夢だったんだねー
 そうだよねーあーよかったー!
 あたし今のジョシュアが大好きだからね!」
そういうと、彼女は来た時とは正反対の浮かれた調子でそのまま部屋から去っていった。
……何気に爆弾発言を聞いたような気がしたけれど、
なにせいきなりのことなので、聞き間違えた可能性が高い。
「……嫌な夢でもみたのかな?」
そう結論づけた彼も、また驚きでしばらく動けなかったのはいうまでもなく、
また正気に戻った彼女がしばらく彼と顔を合わせられなかったのもいうまでもない。


完。

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ああ、うんすっきり。
昔の人って偉大ですね!夢オチって言葉はきっとジャスティス★(まてやこら)
本編の切なさがぶっとばされるかのようなオチです。
とりあえず、これ含めで完結です。

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