「2人祭り」2ページ目。


「ほら、ママっていってごらん」
「ガ・・・ビ・・・ンマ」
一生懸命、言われた通りに話そうとする彼は、
小さい口をもごもご動かし、
できるかぎりの力を振り絞って声を発している。
彼・・・ナルロも、それだけ「ママ」である雫の国の女王を喜ばせたいのだろう。
「ガビーン」としかいえなかった彼も、
なんとか少しずつ、望む発音に近づいているようで、
見ていてなんだか顔が綻んでくる。

こうしていると、
以前・・・僕が闇に魅入られた時に、一度面倒を見かけた時のことを思い出す。
あの時は赤ん坊のイロハも知らないで、
ただがむしゃらに、言葉を覚えさせようとしただけだった。
急にできるわけがないのに、できないからといって、怒って放り出してしまった僕は、
今考えても、なんて愚かだったのだろうと思う。
だから、せめてもの罪滅ぼしのために、
たまにこうやって、ナルロの面倒を見るのが僕の一週間に一度の日課となっていた。

「ガ・・・ン・・・マ・・・ビ・・・んま・・・
バンマ・・・」

ふと気がつくと、僕が考えに囚われている間にも一生懸命練習していたらしいナルロの声が聞こえてきた。
聞くと、最初の言葉が「ガ」から「バ」に変わっている。
「マ」の発音まであと少し。
がんばれ、ナルロ。そう思って、
その調子だよ、と優しく笑いかけると、
ナルロは息を切らしながらも満足そうににっこりと笑った。


レッスン

うたたねキャス君

やれやれ、もうそろそろ終わりそうですね。

ぼこぼことうなる試験管を見つつ、一息ついた私は、
最近傭兵団宿舎に居ついている猫に、一緒に食べ物を
やりにいこうとはしゃいで待っていたキャスを呼びに、
少し離れたところに設置してあるソファーへと向かう。

「キャス、もうそろそろ実験が終わりますので、準備・・・を・・・?」

側にいって、呼びかけると、そこには
スースーと気持ちよさそうに眠っているキャスの姿があった。

ああ、そういえば、昨日は夜の見回りの任務が入っていたんですっけね。
きっと疲れがでたんでしょう。
今日はこのまま寝かせた方がいいかもしれませんね、
そう思った私は、音を立てないように、仮眠用の毛布をとると、
そっと小さな彼の体へとそれをかけた。





意識。




今までなんともなかったハズなのに
意識しだすと、途端に恥ずかしくなるものなのだろうか。

彼女への思いがとって変わった訳でもなく、
ただ、気づいただけなのに、

こんなにも、動揺している自分がいる。

「どうしたの?」と気遣ってくれる彼女の顔が
こちらを覗き込んでくるだけで、
耐え切れなくて。
真っ赤になってしまったと自覚がある顔を盛大に背けてしまった。

恥ずかしいと思う自分が恥ずかしくて、
輪をかけて赤くなってしまう。

自分の気持ちさえ、上手くいかないなんて、
なんてはがゆいんだろうと思いつつ、
まだ治まらない熱を必死にこらえた。



ライバル!




君と僕とは、
お前と俺とは、


友達以上に、



ライバル!!











ぽんっ







大したことない心配事に、眉を寄せていたら、
大丈夫だよ、ってぽんっと頭を叩いてくれた。

とっても嬉しいんだけど、
やっぱり、ブライト様には私なんて、妹としてしか見られてないんだろうなぁ・・・

でも、いいの。
いつか、いつか絶〜対!女の子としてみてもらうんだから!

だから、それまで、覚悟しててよね?







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