ジャスティス☆マン
「ひとーつ、ひじきは苦手だけどにゃん!
ふたーつ、ふりかけかけたら食べれるにゃん!
みっつ、みんなでたべて健康に!
にゃん!ジャスティス☆マンただいま参上にゃーん!」
「・・・なによ、ソレ」
白いマントに白い服、白い帽子に赤いベルト、服の真ん中には“J”とどでかく書かれている服を着て
長ったらしい口上(しかも意味不明)をのたまったキャスに思いっきりティティスは不審な顔をした。
食堂に集まった面々も呆気にとられたように、
暖炉の上に立って得意げにポーズを取っているキャスを見つめている。
なんていうか、あれだ、悪い意味の針のムシロ状態だ。
それなのにキャスは全く意に返さず・・・というか、まず意味が分からないまま、
視線を集めているということだけの事実に酔いしれているようだった。
「すみませんねぇ、どうしても、正義のヒーローになりたいというものですから。」
異様なまでの周りの空気の淀みに、苦笑いしつつ、キャスについて後に入ってきたジュランがフォローした。
「正義のヒーロー?」
怪訝そうにティティスが言うと、ええ、とジュランが呟いた。
「どうやら、テレビのいろいろなヒーローを見て、
自分もあんな風になりたいと思ったらしいんですよ、で、私の所にやってきて言ったんです。
『キャスもあんな風になりたいから、今までなかったよーなヒーローの服を作ってくれにゃん!』
ってね」
「いや・・・だからって、なにもあそこまでしなくても・・・」
あまりのトリッキーな格好に引きつる口元をなんとか押さえつつジョシュアが呟くと、
聞こえたのか、今まで黙って自分の姿に酔っていたキャスが、
暖炉の上から、ぴょんっとジャンプして見事に着地し、ジョシュアに詰め寄る。
「にゃん!何をいうにゃんジョシュア!ヒーローは“こすちゅーむ”を完璧にしてこそヒーローなのにゃん!」、
「へ・・・へーそうなんだ・・・」
強気で来られて否定するわけにもいかず、ジョシュアは慌てて返事を返す。
「・・・とまあ、この調子でして」
ジュランが少し呆れた、でも楽しげな色を含ませて説明した。
いうなれば、子供の遊んでいる姿をにこにこしていながら見守る父親みたいな感じであろうか。
とにかく、ジュラン自身はさして嫌々ながらしていないことは確かである。
「でもねぇ〜、こんなことしたって本当のヒーローになれる訳じゃないわよ・・・」
正義のヒーローになりきっているキャスを目の前にして、ティティスは心底呆れた顔をした。
「だいたい、あなた、“正義”っていう意味分かってるの?」
「にゃん!もちろんにゃん!正義っていうのは、“正しいことを行う人”のことだにゃん!」
「・・・いや、それはそうだろうけど・・・・・・」
自信満々に胸を張って応えるキャスにどこか違うなと首を傾げてジョシュアがつっこむ。
ティティスは、はーっと脱力した息を吐いた。
「ぜんっぜんダメね。ちゃんとした答えになってないわ。
今の状態でヒーローになっても、みんなに迷惑かけるだけよ!諦めなさい!キャス!
あんたがヒーローになるには100億年早いわ!!」
びしっと人差し指を突き立てて迫るティティスに、一瞬怯みつつもキャスは負けじと食いかかった!
「・・・そっそんなことないにゃん!キャスはヒーローになって、みんなを助けるんだにゃん!」
「ムリよ、ムリ、ぜーーーーーったいムリ!!」
びしっとばしっとはっきりと完全否定するティティスに、キャスはうーーーっと唸ると、
キッと釣り上っている猫目を更に釣りあがらせてティティスを睨みあげ、そして・・・
「ムリじゃないのにゃん!うーっ・・・そんなことばっかりいうティティス、おまえは怪人Xだにゃん!
くらうにゃーんっ正義のロケッタパーーーンチッ!!」
捲くし立てるが早いか、自分の両手を突き出した。すると、
パッコーーンッッッ!!
両手の手袋がロボットのように“手ごと”抜け、一直線にティティスの広いおでこに直撃した。
「・・・・・っ、キャス〜〜〜〜!!あんた、なんてことするのよーーーーーっ!!」
「にゃーんっ、ヒーローをバカにする奴はこーなる、うんめーなのにゃーんっ」
威力は弱いとはいえ、当たると結構痛いらしい。赤いアザを作って憤慨するティティスにキャスはあっかんべーをしていった。
「・・・・・っ待ちなさい〜っキャスーーーーっ!!」
それで怒りがMAXに達したティティスはキャスを追い掛け回し、キャスはいつも通り・・・
いや、今回はヒーロー服を着ているという自負心のせいか、
いつも以上にひょいひょいと逃げ回り、いつもの追いかけっこが始まったようだった。
「・・・あのさ、あれもジュランが作ったの?」
二人の追いかけっこを眺めつつ、ジョシュアがジュランに聞いた。
ジュランはにっこり笑って、
「もちろん。あと、ブレスタファイヤーとかパンパンチとか・・・いろいろつけましたよ。ええ。そりゃもうv」
にこにこ笑ってうれしそーに見ているジュランにジョシュアは一息、大きなため息をついていった。
「あのさ・・・ジュラン、一ついっていい?」
「なんですか?」
「やりすぎだから。」
二人の間を一陣の風が走っていった・・・。
そんなこんなでその後数日間、小さなヒーローモドキが、正義という名の迷惑を傭兵団内に撒き散らかし、
そこかしこで、連日リビングドールも真っ青な悲鳴ばかりが立ち上り、
危機感をいだいた町人が自警団の結束を強めたというのも、また事実だったりする。
究極的な結果とはいえ、傭兵団外にいい影響をもたらしたあたり、やはりキャスは正義のヒーローなのかもしれない・・・?
幕
あとがき
ある種の日常のヒトコマ。(を)
続きを書こうとしていたんですが、書く気がなくなったので無理やりまとめたという・・・(汗)
まあでも、アホなノリは気に入っています(笑)