手紙
用事があるからといって、祖国に戻られた貴方様、
元気に、していらっしゃいますか?
自分に厳しい方ですから、日々鍛錬を怠らずに、頑張っておられるのでしょうね。
ですけど、それゆえに、貴方様は無理をしていらっしゃっても、
気づかないことも多いのではないでしょうか。
どうぞ、体をお大事に、なさってください。
たまには、ゆっくりと、お茶でも飲んでくださいね。
最近、お店に行きましたら、おいしそうな種類のお茶がありましたので、
思わず買ってしまいました。
私1人では飲みきれない量なので、気持ち程度ですが、同封します。
お口にあえばいいのですけれど……。
こちらは、相変わらずみんな元気です。
最近の心配事は、お師匠様のお酒の量がまた増えたことです。
体に悪いといっているのに次から次へと飲んでしまいます……。
困ったものです。
今度、じっくり注意していただけると助かります。
年も明けて、また寒さも厳しくなりましたね。
重なりますが、どうぞお体にお気をつけて過ごされてください。
貴方様の幸せを、遠くから、祈っています。
「……ふう」
一気に手紙を書き終えて、シャロットは一息ついた。
そのまま、手紙を折りたたみ、同封のものを差し込んで、封をする。
見返すと、どうしても恥ずかしい気持ちが優先して、結局出せないので、
今回は思い切って、見返すことをやめた。
もしかしたら、スペルを間違っているかもしれないけれど。
出せないままより、気持ちを伝えたかった。
貴方のことを思っている、という証を。
「……無事に、届くといいのですけれど」
ちらりと窓の外を見て、一人つぶやく。
その言葉に答えるかのように、暗い空に浮かぶ星が、キラリと瞬いた気がした。
fin