背中


目の前にある広い背中を見て、俺は目を細める。
少しクセのついた髪と、鎧をまとった頼もしい背中。
よく、ここまで育ったな。
お前は立派だよ。
その髪が少し揺れて、その人物がこちらを見る。

『父さん』

一瞬、笑顔と共に、そんな言葉が聞こえた気がした。



「……どうしたんだいガレス?」
実際に、振り向いたのは別の顔、
青く透き通った瞳と、優しげな風貌が今は怪訝な表情を形づくっている。
「いや……なんでもない。さって、そろそろ、出るぞ!」

見えたのは俺の願望であり、現実とはかけ離れた幻想。

だけど、もし、お前が歪まずに、そのまま育っていたとしたら、
そうやって、頼もしく思うときもあったんだろうか、と
今目の前にある広い背中を見るたびに、そう、思わずにはいられない。


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好きだとか嫌いだとか、
そういうものじゃない。

そういうものではないんだ。

もっと広くて、もっと大きくて、
守りたいと、強く、強く思うもの。
胸に、刻みこんだもの。

守るためなら、どんなことにも耐えられるもの。
耐えられる価値があるもの。

誰の記憶に残らなくても構わない。
ただ、俺は一心に思い、そして行動するだけだ。
君が好きだったこの大地と、
今、君が見ているこの空のために。


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イブの夜


「今日はクリスマスにゃーん。サンタさん来るかにゃーん」
窓辺で、静かに降る雪を眺め、
しっぽをゆらゆら揺らしながら、歌うように言うケットシーの肩に、
ポンと手が置かれる。
「今年もきっと来ますよ。さあ、明日も早いですから、
 早く寝ましょうね」
そういう魔術師の懐には、リボンで綺麗に飾ったプレゼント。

明日の朝、この贈り物を手にした時、
君は笑顔で喜んでくれるでしょうか?

送る側もらう側、どちらもドキドキのイブの夜。

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