Admiration
「ブライト様は、シェイドのこと、どう思ってるの?」
ある日唐突に聞かれた言葉に、一瞬絶句する。
「え・・・なぜそんなことを聞くんだい?」
「だって、最近いつも一緒にいるから・・・」
何故だか、口ごもって、拗ねているような口調で彼女はいう。
そういえば、考えたことはあまり無かったけれど、
いわれてみれば、よく一緒にいるような気がすることに気づいた。
どうしてだろう、和解したとはいえ、彼との溝とは相変わらずあるはずなのに。
縮まっているはずの溝だけれど、多分全て埋まることはないはずだろうに。
自分の思考を巡ってみる。僕はどうして彼と一緒にいるのだろう。
すると、完全ではないけれど、一つ思い当たることがあった。
「・・・そうだね・・・それは、彼が正しいから、かな。」
「?正しい・・・?」
「うん。シェイドは、正しいという事を知っている。
気をつけてはいるけれど、僕がもし、また間違ったことをした場合、
彼は迷わず僕を叱咤して、正してくれると思うから。
だからかな、なんとなく、一緒にいてしまうのは」
それは甘えなのかもしれないけれど。
僕は弱いから、まだ彼を恐れる気持ちはぬぐえないかもしれないけれど。
彼のまっすぐな瞳に、正されるのは確かだから。
もしかしたら、僕は彼に憧れているのかもしれない。
自分とは正反対の、あの蒼眼の瞳に。
「シェイドはさ、ブライトのことどう思ってるの?」
いきなりそう聞かれて、俺は飲みかけていたお茶を危うく吹き零すところだった。
「・・・なんでそういうことを聞くんだ・・・?」
「だってさ、なんか、いつも一緒にいるから」
あっけらかんとした調子で彼女は言う。
いわれてみれば、確かにそうだ。クラスだって俺はA組、あいつはB組。
全然違うのに、何故だかいつも一緒にいることが多い気がする。
何故、だろうか。
和解はしたとはいえ、けして、虫が好く相手ではないはずなのに。
どちらかというと、嫌煙してしまうような性格の奴なのに。
記憶の縁を辿ってみる。どうして俺はあいつと一緒にいるのだろう。
やがて、一つ、思い浮かぶことがあった。それは。
「そうだな・・・あいつが、優しいから、かな。」
「優しいって?」
「俺とは違って、あいつは優しい。
あいつが闇に堕ちてから、あいつの気持ちに気づかずに冷たい言葉をいったことも、
あいつが元に戻った時には、俺が謝るより先に、俺のことを笑って許していた。
だから、俺がもし、気づかずに他人に冷たい言葉を吐いたとしても、
あいつがいれば、それに気づけるかもしれない。
だからかな、あいつと一緒に居てしまうのは」
それは、甘えだと思うし、本当なら、その能力も自分で磨くことなのかもしれない。
だけど、俺は弱いくせに、弱いところを見せたがらない性質の悪い性格だから。
あいつの優しい眼差しに、気づかされることは確かなんだ。
もしかしたら・・・認めるのは癪だけれど、本当は憧れているのかもしれない。
俺とは正反対の、あの紅眼の瞳に。
・・・という訳で「Admiration=憧れ」でした。
私にしては珍しく「GYU」設定です。
「GYU」で2人があまりにも一緒にいることが多いため、
仲良くしてくれて嬉しいんだけど、絶えず無印引きずって納得できない部分があって、
それの補完として描いてみました。
以前描いた「二つのつぼみ」の派生系かな?
どうやら私は2人の和解が一番の望みらしい・・・
まあ、何にしても、お互いに無い所を補う、ライバルだけれど、友だちでもある。
そんな2人が私の理想です。
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